海外の医療費はいくら?国別の治療費相場と高額請求を避ける方法
アメリカで盲腸になったら300万円
筆者がこの事実を初めて知ったのは、アメリカ旅行から帰国した後でした。ニューヨーク滞在中にちょっと腹痛があり、「まあ大丈夫だろう」と放っておいたのですが、もしあれが盲腸だったらと思うとぞっとします。
海外の医療費は日本とは桁が違います。日本で盲腸の手術を受けた場合、健康保険の3割負担で10〜15万円程度。高額療養費制度を使えば自己負担はさらに下がります。一方、アメリカで同じ手術を受けると約300万円。保険なしで全額自己負担です。
「自分は健康だから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。でも、旅先で食あたりになる、階段で転んで骨折する、持病が急に悪化する。こうしたトラブルは誰にでも起こりえます。この記事では、国別の医療費相場と、高額請求を避けるための具体的な対策を解説します。
国別の医療費比較テーブル
まずは衝撃の数字を見てください。以下は各国で代表的な治療を受けた場合の費用相場です。日本との差を実感してもらうために、日本の費用も最上段に入れています。
| 国・地域 | 盲腸手術(入院含む) | 骨折の治療 | 救急車・救急搬送 |
|---|---|---|---|
| 日本(3割負担) | 10〜15万円 | 3〜5万円 | 無料 |
| アメリカ(本土) | 約300万円 | 約200万円 | 10〜50万円 |
| ハワイ | 約250万円 | 約150万円 | 10〜40万円 |
| カナダ | 約150〜200万円 | 約50〜100万円 | 5〜10万円 |
| イギリス | 約100〜150万円 | 約50〜80万円 | 原則無料(NHS) |
| フランス | 約100〜150万円 | 約30〜60万円 | 5〜15万円 |
| ドイツ | 約100〜150万円 | 約30〜50万円 | 5〜10万円 |
| スイス | 約200〜300万円 | 約100〜150万円 | 10〜30万円 |
| イタリア | 約80〜120万円 | 約20〜40万円 | 原則無料(公立) |
| スペイン | 約80〜120万円 | 約20〜40万円 | 原則無料(公立) |
| オーストラリア | 約100〜150万円 | 約50〜80万円 | 5〜15万円 |
| 韓国 | 約40〜60万円 | 約15〜30万円 | 3〜5万円 |
| タイ | 約30〜50万円 | 約10〜20万円 | 2〜5万円 |
| シンガポール | 約80〜150万円 | 約30〜50万円 | 5〜10万円 |
| 台湾 | 約30〜50万円 | 約10〜20万円 | 1〜3万円 |
この表を見ると、アメリカの医療費が突出して高いことがわかります。ただしヨーロッパも決して安くはありません。イギリスやフランスの盲腸手術は100万円超え。スイスに至ってはアメリカに匹敵する水準です。
「東南アジアなら安いから保険は不要」という意見もたまに聞きますが、タイの盲腸手術でも30〜50万円。日本の3割負担と比べれば3〜5倍の費用です。しかも、現地の言葉が通じない状態で病院を探し、治療を受け、全額を現金またはカードで支払う。想像しただけでも心細くなります。
救急搬送の費用が一番怖い
治療費以上に恐ろしいのが、救急搬送の費用です。テーブルにも載せましたが、もう少し詳しく見てみましょう。
アメリカで救急車を呼ぶと、出動するだけで10万円以上かかります。搬送距離が長くなると費用は跳ね上がり、ヘリコプターによる搬送になると200〜500万円に達することもあります。山間部や離島で事故に遭い、ヘリ搬送が必要になったケースでは、搬送費だけで1,000万円を超えた事例も報告されています。
日本の感覚で「とりあえず救急車を呼ぼう」と考えると、それだけで数十万円の費用が発生するのです。
筆者がドイツを旅行していたとき、同じホステルに泊まっていた日本人旅行者が食あたりで夜中に救急搬送されたことがありました。幸い海外旅行保険に入っていたので自己負担はなかったそうですが、保険会社への請求額は搬送と点滴だけで20万円を超えていたと聞きました。食あたりの点滴に20万円です。
保険なしで海外の病院にかかるとどうなるか
ここからは、実際に保険なしで海外の病院にかかった場合に何が起きるのかを具体的に見ていきます。
ケース1: アメリカで交通事故に遭った場合
アメリカで交通事故に遭い、救急搬送されて3日間入院したケースを想定します。費用の内訳はおおよそ以下のとおりです。
- 救急車の出動と搬送: 30万円
- 救急外来の初診料: 15万円
- CT検査: 20万円
- 入院費(3日間): 150万円
- 手術費: 200万円
- 麻酔費: 50万円
- 処方薬: 10万円
- 合計: 約475万円
これは控えめな見積もりです。ICU(集中治療室)に入った場合、1日あたり100万円以上かかるケースもあります。1週間のICU入院で700万円。退院後のリハビリ費用まで含めると、1,000万円を超えることも珍しくありません。
ケース2: ヨーロッパで骨折した場合
スイスのスキーリゾートで転倒し、足を骨折したケースを想定します。
- ヘリコプター搬送(ゲレンデから病院): 100万円
- 骨折の手術と入院(2日間): 150万円
- 帰国便のビジネスクラスへの変更(足を伸ばせる座席が必要): 30万円
- 合計: 約280万円
スキーやスノーボードでの怪我は海外では定番のトラブルです。ゲレンデから病院までのヘリコプター搬送だけで100万円かかるケースは、スイスやオーストリアでは珍しくありません。
ケース3: 東南アジアで食中毒になった場合
タイで食中毒になり、脱水症状で病院に運ばれたケースを想定します。
- 外来受診と点滴: 5万円
- 血液検査: 3万円
- 処方薬: 1万円
- 合計: 約9万円
東南アジアは比較的安価ですが、それでも日本の感覚とは異なります。しかも、バンコクの私立病院(外国人がよく利用する英語対応の病院)の場合、この2〜3倍の費用がかかることもあります。
保険なしで支払えなかった場合
海外で高額な治療費を支払えなかった場合、病院から退院を拒否されることがあります。治療費の全額を支払うか、支払い保証がない限り退院させないという対応です。
大使館に連絡して一時的な立て替えを依頼することも可能ですが、その場合は帰国後に全額を返済する義務が生じます。最悪の場合、帰国後に自己破産を選択せざるを得ないケースもあります。
数千円の保険料を節約した結果が自己破産。これが海外旅行保険に入らないリスクの現実です。
対策1: クレジットカードの付帯保険を活用する(無料でできる対策)
海外の高額な医療費に対する最初の防衛線は、クレジットカードに付帯する海外旅行保険です。年会費無料のカードでも海外旅行保険が付いているものがあり、追加費用ゼロで一定の補償が受けられます。
代表的なのがエポスカードです。年会費無料にもかかわらず、以下の補償が付帯しています。
- 傷害治療費用: 最高200万円
- 疾病治療費用: 最高270万円
- 賠償責任: 最高3,000万円
- 救援者費用: 最高100万円
- 携行品損害: 最高20万円
疾病治療270万円あれば、ヨーロッパでの骨折治療やタイでの入院費用はカバーできる水準です。東南アジアやヨーロッパ(スイスを除く)への短期旅行であれば、まずはこのカードを持っておくだけでも最低限の安心感が得られます。
ただし注意点があります。クレジットカードの付帯保険には限度額があるため、アメリカのように治療費が300万円を超える国では補償が足りません。また、複数のカードを持っていれば補償額が合算される仕組みがありますが、死亡・後遺障害以外の治療費用が対象です。
カード付帯保険はあくまで「無料でできる最低限の備え」と考え、渡航先によっては次に紹介する単体の海外旅行保険と組み合わせることをおすすめします。
対策2: 海外旅行保険で手厚いカバーをつける
アメリカやスイスなど医療費が特に高い国に行く場合、またはスキーやダイビングなどアクティビティに参加する場合は、クレジットカードの付帯保険だけでは心もとないです。単体の海外旅行保険に加入して、補償を手厚くしましょう。
海外旅行保険を選ぶ際のポイントは3つあります。
ポイント1: 治療費用の補償上限を確認する
最も重要なのは治療費用の補償上限です。アメリカに行くなら最低でも1,000万円、できれば無制限のプランを選びたいところです。ICUに数日入院すれば数百万円はすぐに超えます。
ポイント2: 救援者費用と搬送費用を確認する
海外で重篤な状態になった場合、家族が現地に駆けつける費用や、日本への医療搬送費用が発生します。医療搬送はチャーター機の手配が必要になることもあり、数百万〜数千万円の費用がかかります。救援者費用の補償上限も忘れずに確認してください。
ポイント3: キャッシュレス対応の病院があるか確認する
保険会社が提携している病院であれば、窓口での自己負担なしで治療を受けられます(キャッシュレス治療)。そうでない場合は一旦全額を立て替え、帰国後に保険金を請求する流れになります。数百万円の立て替えは現実的ではないので、キャッシュレス対応の病院ネットワークが充実している保険を選ぶのが鉄則です。
海外旅行保険は複数の保険会社を比較して選ぶのがベストです。補償内容と保険料のバランスは会社によってかなり異なります。
筆者自身は、クレジットカードの付帯保険に加えて単体の海外旅行保険に入るスタイルです。カード付帯で270万円、単体保険で1,000万円の補償があれば、合計で1,270万円の治療費用補償。アメリカでの短期旅行であれば、このくらいの補償があると安心して渡航できます。
クレジットカード付帯保険と単体保険の使い分け
どちらを選ぶべきか迷う方のために、渡航先別のおすすめをまとめます。
カード付帯保険だけでOKなケース
- 渡航先が東南アジア(タイ、ベトナム、フィリピンなど)
- 渡航先が韓国、台湾
- 滞在期間が1週間以内
- 危険なアクティビティの予定がない
単体保険を追加したほうがよいケース
- 渡航先がアメリカ、カナダ、スイス
- 渡航先がヨーロッパ(長期滞在の場合)
- 滞在期間が2週間以上
- スキー、ダイビング、トレッキングなどの予定がある
- 持病がある
アメリカに行くなら、カード付帯保険だけで乗り切ろうとするのは危険です。盲腸手術の300万円に対してカード付帯の上限が200〜270万円では、差額の30〜100万円が自己負担になります。単体保険を追加しておけば、この差額がカバーされます。
対策3: 現地で病院を探すための通信環境を確保する
海外で体調を崩したとき、まず必要になるのはスマホで病院を検索する通信環境です。「近くの病院はどこか」「何時まで開いているか」「英語が通じるか」「保険会社のサポートデスクの電話番号は」。これらの情報にアクセスできるかどうかが、対応の速さを大きく左右します。
保険会社のサポートデスクに電話すれば、最寄りのキャッシュレス対応病院を紹介してもらえます。しかし、その電話をかけるためにもネット環境が必要です。ホテルのWiFiが使える状態ならよいですが、外出中に倒れた場合はモバイル回線がないと連絡手段がありません。
筆者はすべての海外旅行でeSIMを使っています。到着直後から通信が使えるため、空港を出た瞬間からGoogle Mapsも電話も使える状態です。現地SIMを空港で買う方法もありますが、体調が悪いときにカウンターで手続きする余裕はないでしょう。eSIMなら日本にいるうちにインストールまで済ませておけるので、いざというときにも安心です。
日本の健康保険の海外療養費制度
「日本の健康保険は海外でも使えるのか」という質問をよく見かけます。結論から言えば、使えますがほとんど役に立ちません。
海外療養費制度は、海外で支払った医療費の一部を帰国後に申請すれば還付してもらえる制度です。ただし、還付額の算定基準は「日本国内で同じ治療を受けた場合にかかる費用」です。
つまり、アメリカで300万円の盲腸手術を受けても、日本での盲腸手術の自己負担額が10〜15万円であれば、還付されるのはその7割(健康保険負担分)の7〜10万円程度です。300万円支払って7万円戻ってくる計算です。
さらに申請の手間も大変です。
- 現地の病院で診療内容の証明書を取得する(英語の場合は翻訳が必要)
- 帰国後に健康保険の窓口で申請する
- 審査に数ヶ月かかることがある
海外療養費制度は「ないよりはまし」程度のもので、海外旅行保険の代わりにはなりません。あくまで補助的な制度として認識しておいてください。
現地の病院にかかるときの注意点
実際に海外で病院にかかる場面を想定して、知っておくべきポイントをまとめます。
受診前に保険会社に連絡する
海外旅行保険に加入している場合、まず保険会社のサポートデスクに電話してください。キャッシュレス対応の病院を紹介してもらえるほか、通訳サービスが利用できることもあります。自己判断で病院に駆け込むと、キャッシュレス治療の対象外になる場合があります。
パスポートと保険証券を持参する
病院で身分証明書としてパスポートの提示を求められます。保険証券(またはそのコピー)も一緒に持参してください。スマホに保険証券のPDFを保存しておくと便利です。
領収書と診断書を必ずもらう
帰国後の保険金請求に必要です。治療内容、処方薬、費用の内訳が記載された書類を病院からもらってください。言語が異なる場合でも、英語の書類であれば保険会社は受け付けてくれます。
クレジットカードの限度額を確認しておく
キャッシュレス治療が使えない病院の場合、クレジットカードで立て替え払いをすることになります。海外の医療費は高額なので、カードの利用限度額が足りるか事前に確認しておきましょう。複数枚のカードを持参するのも有効な対策です。
歯科治療は保険の対象外になることが多い
意外と盲点なのが歯科治療です。多くの海外旅行保険では、歯科治療は補償対象外です。旅行中に詰め物が取れた、歯が欠けたというトラブルは少なくありませんが、これらの治療費は自己負担になるケースがほとんどです。
アメリカの歯科治療費は特に高額で、虫歯1本の治療で5〜10万円、抜歯で10〜20万円かかります。出発前に歯科検診を受けておくのが最も確実な予防策です。
言語の壁をどう越えるか
海外の病院では当然ながら日本語は通じません。英語が通じる病院であれば症状を伝えることは可能ですが、医療用語は日常会話とは別物です。痛みの種類(鋭い痛み、鈍い痛み、刺すような痛みなど)を英語で伝えるのは、英語が得意な人でも簡単ではありません。
保険会社のサポートデスクに電話すれば通訳サービスを利用できることがあります。また、スマホの翻訳アプリも緊急時には役立ちます。症状を日本語で入力して翻訳結果を医師に見せるだけでも、コミュニケーションの精度は上がります。通信環境の確保が重要だと繰り返しお伝えしているのは、こうした場面でも通信が必要になるからです。
渡航先別の医療費リスクと対策の早見表
最後に、渡航先ごとの医療費リスクと推奨する対策を一覧にまとめます。
| 渡航先 | リスク | カード付帯保険 | 単体保険 | 推奨度 |
|---|---|---|---|---|
| アメリカ・カナダ | 極めて高い | 不十分 | 必須 | 単体保険を強く推奨 |
| スイス | 極めて高い | 不十分 | 必須 | 単体保険を強く推奨 |
| ヨーロッパ(スイス以外) | 高い | 短期なら可 | 長期なら推奨 | カード+単体が安心 |
| オーストラリア・NZ | 高い | 短期なら可 | 長期なら推奨 | カード+単体が安心 |
| 韓国・台湾 | 中程度 | おおむね十分 | 任意 | カード付帯で可 |
| 東南アジア | 中程度 | おおむね十分 | 任意 | カード付帯で可 |
どの渡航先であっても、最低限クレジットカードの付帯保険は確保しておくべきです。エポスカードを1枚持っているだけで、万が一のときの経済的ダメージが大幅に軽減されます。
まとめ: 数千円の保険料で数百万円のリスクを消す
海外の医療費は日本の常識とはかけ離れています。アメリカの盲腸手術300万円、スイスのヘリコプター搬送100万円。こうした費用は、発生してからでは取り返しがつきません。
対策はシンプルです。
- まずは年会費無料のエポスカードで、無料の海外旅行保険を確保する
- アメリカやスイスに行くなら、保険マンモスで単体の海外旅行保険を比較して加入する
- 現地で病院を探せるように、AiraloのeSIMで通信環境を準備しておく
「自分だけは大丈夫」という根拠のない自信が、数百万円の請求書に変わる。海外の医療費とはそういうものです。出発前の数分間で保険の手続きを済ませておけば、旅先で体調を崩しても「保険があるから大丈夫」と落ち着いて対処できます。
海外旅行保険の選び方やおすすめプランについて詳しく知りたい方は、海外旅行保険おすすめ比較をご覧ください。保険金の請求手続きについては海外旅行保険の請求ガイドにまとめています。エポスカードの保険内容の詳細はエポスカードの海外旅行保険レビューで解説しています。
よくある質問
海外で病院にかかるといくらくらいかかりますか?
海外旅行保険に入らないとどうなりますか?
クレジットカードの付帯保険だけで十分ですか?
海外で救急車を呼ぶと費用はかかりますか?
海外旅行保険はいくらくらいしますか?
海外で病院を探すにはどうすればいいですか?
日本の健康保険は海外でも使えますか?
持病があっても海外旅行保険に入れますか?
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