VPNでホテルや航空券が安くなるって本当?実際に試してわかったこと
VPNで旅行費用が安くなるという噂は本当か
「VPNを使って接続する国を変えれば、ホテルや航空券が安くなる」
海外旅行の節約術を調べていると、こんな情報を見かけることがあります。もし本当なら、VPNに月数百円払うだけで旅行費用を大幅に節約できることになります。
価格差が出ることは事実ですが、「大幅に安くなる」というほどの効果は期待しないでください。筆者が実際に試した結果を含め、この記事で詳しく説明します。
VPNの基本的な仕組みについては、VPNとは何かをゼロから解説した記事をご覧ください。
なぜ接続する国によって価格が変わるのか
ホテルや航空券の予約サイトが国によって異なる価格を表示する仕組みは「ダイナミックプライシング」や「ジオベースドプライシング」と呼ばれています。
簡単に言えば、アクセスしてきたユーザーの国や地域に応じて価格を変える手法です。物価の高い国からアクセスしている人には高い価格を、物価の低い国からアクセスしている人には安い価格を表示することで、各市場に合わせた価格設定をしています。
この仕組みが存在する理由は、企業側の収益最大化です。アメリカのユーザーと東南アジアのユーザーでは支払える金額が異なるため、同じサービスに異なる価格をつけることで、どちらの市場からも最大限の売上を得ようとしています。
VPNを使えばIPアドレス(インターネット上の住所のようなもの)を別の国のものに変えられるため、理論上はこの価格差を利用して安い価格で予約できる可能性があります。
実際に試してみた結果
筆者はBooking.comで同じホテルを、日本のIP・タイのIP・アメリカのIPの3パターンで価格比較してみました。条件は同じ日程・同じ部屋タイプで、シークレットモードを使い、ログインしていない状態で検索しています。
バンコクのホテル(4つ星、1泊)
日本のIPからの価格は約12,800円、タイのIPからは約12,400円、アメリカのIPからは約13,100円でした。日本とタイの差額は約400円です。
ソウルのホテル(3つ星、1泊)
日本のIPからの価格は約9,200円、タイのIPからは約9,200円、アメリカのIPからは約9,500円でした。日本とタイでは差がなく、アメリカのIPだけやや高い結果でした。
東京のホテル(4つ星、1泊)
日本のIPからの価格は約18,500円、タイのIPからは約18,300円、アメリカのIPからは約18,900円でした。差額は200〜600円の範囲です。
3つのホテルを比較した限り、価格差は確かに存在しますが、いずれも数百円程度でした。1泊あたり数百円の差は、VPNの月額料金やかけた手間を考えると、劇的な節約とは言いにくい数字です。
航空券での価格差も調べてみた
ホテルだけでは不十分なので、航空券でも同じ検証を行いました。
東京→バンコク(エコノミー、往復)
日本のIPでAirAsiaの公式サイトを検索すると約42,000円。タイのIPに切り替えると約39,500円。差額は約2,500円で、ホテルよりは大きな差が出ました。ただし、タイバーツ建て表示のため、決済時の為替レートと海外決済手数料(約1.6〜2.2%)を加味すると、実質の差額は1,500円程度に縮まります。
東京→ロンドン(エコノミー、往復)
British Airwaysの公式サイトで検索したところ、日本のIPで約158,000円、イギリスのIPで約155,000円、インドのIPで約149,000円でした。インドIPとの差額は約9,000円と、長距離路線では差が大きくなる傾向があります。
ただし、この手の差額は航空会社の公式サイトで出やすく、SkyscannerやGoogle Flightsなどのメタ検索サイトでは差がほぼゼロでした。メタ検索サイトは各国の価格を横断的に引っ張るため、VPNで接続先を変える意味が薄いのです。
レンタカーでの検証
ハワイでのレンタカーもHertzの公式サイトで確認しました。日本のIPとアメリカのIPで同じ日程・同じ車種を検索した結果、価格差はわずか200円程度。レンタカーはピックアップ場所と保険内容で価格が決まるため、VPNの効果は限定的です。
価格差が出やすいケースと出にくいケース
差が出ることがあるケース
航空会社の公式サイトでは、アクセス元の国によって運賃が異なることがあります。特にLCC(格安航空会社)や、東南アジア・中東の航空会社で差が出やすい傾向があります。
また、ホテル予約サイトでも、特定の国向けに地域限定のプロモーション価格を出していることがあります。たとえば、タイ国内からアクセスしたときだけ表示される「タイ居住者向け割引」のようなものです。
差が出にくいケース
近年のOTA(オンライン旅行代理店)は、IPアドレスだけでなく、アカウント情報・過去の検索履歴・Cookie・デバイス情報など、複数の要素を組み合わせて価格を決めるようになっています。
つまり、VPNでIPアドレスを変えても、ログインしているアカウントの登録国が日本であれば、日本向けの価格が表示されることがあります。これが「VPNで接続先を変えたのに価格が変わらない」という現象の原因です。
ExpediaやAgodaなどの大手OTAでは、この傾向が特に強くなっています。
さらに、最近のサブスクリプションサービス(Netflixなど)もVPNからのアクセスを積極的にブロックするようになっています。予約サイトも同様で、VPN検知の精度は年々向上しています。
サブスクリプション料金の地域差について
旅行費用ではありませんが、「VPNで安くなるもの」として話題になるのがサブスクリプションサービスの地域別料金です。
たとえばYouTube Premiumは、日本では月額1,280円ですが、トルコやアルゼンチンでは月額数百円相当で提供されています。SpotifyやNetflixにも同様の地域差があります。
ただし、これらのサービスでVPNを使って安い国の料金で契約する行為は、ほぼすべてのサービスで利用規約に違反します。アカウント停止のリスクがあるだけでなく、決済に使うクレジットカードの発行国と接続元の国が異なると、決済自体が弾かれることも増えています。
この方法は数年前までは通用しましたが、現在は実用的とは言いにくい状況です。
価格比較を試したい方への実践手順
それでも自分で確認してみたいという方のために、手順を説明します。
手順1:VPNに接続する
NordVPNなどのVPNアプリを起動し、比較したい国のサーバーに接続します(VPNサービスの比較はこちら)。物価の低い国(タイ、インド、ブラジルなど)を選ぶと、差が出やすい傾向があります。
手順2:シークレットモードでブラウザを開く
Cookieや閲覧履歴の影響を排除するため、必ずシークレットモード(プライベートブラウジング)を使います。Chromeなら「Ctrl + Shift + N」、Safariなら「ファイル > 新規プライベートウインドウ」で開けます。
手順3:ログインせずに検索する
予約サイトにログインすると、アカウント情報に紐づいた価格が表示されるため、ログインしない状態で検索してください。
手順4:通貨を統一して比較する
表示通貨が異なると正確な比較ができません。すべて同じ通貨(日本円やUSドル)に統一して比較してください。また、為替レートによる見かけの差額と実際の差額は異なる場合があるため、決済時の通貨と手数料も考慮する必要があります。
検証結果まとめ
ここまでの検証結果を整理します。
- ホテル予約(Booking.com): 200〜600円の差額。3件中3件で差は1,000円以下
- 航空券(LCC公式サイト): 1,500〜9,000円の差額。長距離路線ほど差が大きい
- 航空券(メタ検索サイト): ほぼ差なし。VPN接続の効果なし
- レンタカー: 200円程度。ほぼ効果なし
つまり、「長距離路線の航空券を航空会社の公式サイトで直接予約する場合」にのみ、まとまった差額が期待できます。それ以外では、手間に見合わないケースがほとんどです。
筆者の正直な見解
VPNを使った旅行費用の節約は、「できなくはないが、期待しすぎないほうがいい」というのが筆者の結論です。
数百円の差額のために毎回VPNの接続先を切り替え、シークレットモードで検索し、通貨を揃えて比較する手間を考えると、費用対効果は高くありません。その時間を使って、セール情報を探したり、海外旅行に強いクレジットカードのポイント還元を活用したりするほうが、現実的な節約になります。
ただし、VPNにはセキュリティ保護、海外からの動画視聴、中国での通信制限の回避など、価格比較以外の実用的なメリットがあります(NordVPNの詳しいレビューはこちら)。これらの用途でVPNをすでに持っているなら、ついでに価格を比較してみる価値はあります。
つまり、「VPNを持っている人がついでに試す」のは合理的ですが、「旅行費用を安くするためだけにVPNを購入する」のはおすすめしません。
予約サイトがVPN利用を検知する場合がある
最後に注意点として、一部の予約サイトはVPN経由のアクセスを検知し、ブロックすることがあります。
VPNサーバーのIPアドレスはデータベース化されているため、予約サイト側で「このIPはVPNのもの」と判別できる場合があります。ブロックされると、ページが正常に表示されない、決済が通らない、予約後にキャンセルされるといったトラブルにつながる可能性があります。
VPN経由で予約する場合は、予約完了後に確認メールが届いているか、予約が有効になっているかを必ず確認してください。
為替レートと決済手数料の落とし穴
VPNで安い国の価格を見つけても、実際に支払う金額は表示価格と異なることがあります。ここを理解していないと、「安く買えた」と思っていたのに実際は変わらなかった、という結果になりかねません。
まず、クレジットカードの海外事務手数料があります。日本のクレジットカードで外貨決済すると、1.60〜2.20%の手数料が上乗せされます。VISA/Mastercardで1.60〜1.63%、American Expressで2.00%が一般的です。
次に、動的通貨変換(DCC)の問題があります。海外の予約サイトで「日本円で支払う」を選択すると、サイト側が独自の為替レートを適用します。このレートは通常、カード会社のレートより3〜5%不利です。VPNで安い国の価格を見つけた場合、現地通貨のまま決済するほうが有利です。
さらに、一部の予約サイトは決済通貨によって価格自体を変えることがあります。タイバーツ建てで表示された安い価格が、日本円決済に切り替えた瞬間に価格が上がるケースも確認しています。
VPNで価格比較をするなら、最終的な支払い金額まで確認してからメリットを判断してください。表示価格だけで喜ぶのは早計です。
筆者が実際に節約できた唯一のケース
正直に書くと、筆者がVPNで意味のある節約を実感したのは1回だけです。
マレーシア航空の公式サイトで、クアラルンプール→東京の往復チケットを検索した際、マレーシアのIPから見た価格が日本のIPより約12,000円安かったことがあります。ただしこれは、マレーシア国内居住者向けのプロモーション価格だった可能性が高く、再現性があるかどうかは不明です。
それ以外の数十回の検証では、ホテルで数百円、航空券で数千円という程度の差しか見つかりませんでした。1回の検証に20〜30分かかることを考えると、時給換算では割に合わない作業です。
筆者がVPNに感じている本当の価値は、価格比較ではなく、海外のフリーWiFiでの安全な通信と、日本の動画サービスの視聴です。価格比較はあくまで「ついでにやるもの」という位置づけです。
VPN以外の確実な節約方法
VPNでの価格比較は不確実ですが、旅行費用を確実に抑える方法はいくつもあります。
海外旅行向けのクレジットカードを使うのが最も確実です。たとえばエポスカードは年会費無料で海外旅行保険が自動付帯するため、保険料の数千円がそのまま節約になります。詳しくは海外旅行におすすめのクレジットカード5枚で比較しています。
ホテル予約では、VPNで接続先を変えるよりも、セール時期を狙うほうが効果的です。Booking.comのブラックフライデーセールやAgodaの定期的なクーポン配布では、20〜30%オフになることがあります。
航空券は、購入タイミングのほうが価格への影響が大きいです。一般的に出発の6〜8週間前が最も安い傾向があり、それ以降は値上がりしていきます。Googleフライトのアラート機能を使えば、狙っている路線の値下がりを自動で通知してくれます。
eSIMを使って通信費を抑えるのも、旅行全体のコスト削減に効果的です。キャリアのデータローミング(1日最大2,980円)に比べて、eSIMなら1日あたり数百円で済みます。5日間の旅行で10,000円以上の差が出ることもあり、VPNでの価格比較より確実に節約できます。eSIMの選び方も参考にしてください。
マイレージの戦略的活用も見逃せません。海外旅行に強いクレジットカードのポイント還元率は1〜2%程度ですが、出張と旅行の支払いを集約すれば、年間で1〜2回分の航空券相当のマイルが貯まります。VPNで数百円を節約するより、はるかに大きなリターンです。
よくある質問
VPNを使えば必ずホテルや航空券が安くなる?
どの国のサーバーに接続すると安くなりやすい?
VPNを使って予約すると違反になる?
シークレットモードとVPNは何が違う?
VPNを使った価格比較は手間に見合う?
航空券でもVPNで安くなる?
レンタカーの料金もVPNで変わる?
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