ETIAS(欧州渡航情報認証制度)はいつから?申請方法・料金・対象国を解説
ヨーロッパ旅行に新たな手続きが加わる
ヨーロッパに行くのにビザはいらない。日本人旅行者にとって、これは当たり前の感覚でした。パスポートさえあればフランスもイタリアもドイツも自由に回れる。筆者もその恩恵を受けて、ヨーロッパ十数カ国を旅してきました。
ところが、この「パスポートだけでOK」という状況がまもなく変わります。ETIAS(エティアス)という電子渡航認証の導入が決まったのです。アメリカに行く前にESTAを取るのと同じように、ヨーロッパに行く前にもオンラインで事前申請が必要になります。
「いつから始まるのか」「いくらかかるのか」「どの国が対象なのか」。この記事では、2026年3月時点の最新情報をもとに、ETIASについて知っておくべきことを整理します。
ETIASとは何か
ETIASは「European Travel Information and Authorisation System」の略で、日本語では「欧州渡航情報認証制度」と訳されます。EU(欧州連合)が安全保障の強化を目的として導入する電子渡航認証システムです。
仕組みとしてはアメリカのESTAやカナダのeTAと同じ考え方です。ビザ免除で入国できる国の渡航者に対して、出発前にオンラインで情報を提出してもらい、セキュリティ上のリスクがないか事前にスクリーニングする。問題がなければ渡航認証が発行され、入国が許可されます。
重要なのは、ETIASはビザではないという点です。大使館に行く必要もなければ、面接もありません。パソコンやスマホからオンラインで申請し、数分〜数日で結果が出ます。ビザなし渡航の仕組み自体がなくなるわけではなく、そこに事前のオンライン認証というステップが1つ加わるイメージです。
ETIASはいつから始まるのか
ここが最も多くの人が気にしているポイントですが、結論から言うと、2026年第4四半期(10月〜12月)の運用開始が予定されています。
ただし、この日程を額面どおりに受け取るのは難しいのが正直なところです。ETIASの開始時期は過去に何度も延期を繰り返してきました。
- 当初の予定: 2021年
- 1回目の延期: 2023年に延期
- 2回目の延期: 2024年に延期
- 3回目の延期: 2025年に延期
- 4回目の延期: 2026年後半に延期
延期の主な原因は、ETIASの前提システムである「EES(出入国管理システム)」の開発遅延です。EESは空港での指紋・顔写真の登録を行うシステムで、これが動かないとETIASも動かせません。EESは2025年10月から段階的に運用が始まり、2026年4月までにシェンゲン圏の全加盟国で完全稼働する予定です。
2025年3月のEU内務大臣理事会で「ETIASは2026年第4四半期に開始」というスケジュールが承認されました。EESの展開が順調に進んでいることを考えると、今回こそ実現する可能性は高まっていますが、欧州議会の最終承認がまだ残っているため、確定と断言するのは時期尚早です。
もう1つ重要な情報として、運用開始後6ヶ月間は移行期間が設けられる予定です。この期間中はETIASなしでも入国が可能です。つまり、2026年10月に開始されたとしても、実質的にETIASが必須になるのは2027年春以降ということになります。
2026年のヨーロッパ旅行を計画している方は、出発前に最新情報を確認してください。現時点ではまだETIASの申請受付は始まっていません。
料金は20ユーロ(18歳未満・70歳以上は無料)
ETIASの申請料金は20ユーロ(日本円で約3,300円、2026年3月時点)です。
当初は7ユーロと発表されていましたが、2025年7月に欧州委員会がインフレや運用コストの上昇を理由に20ユーロへの引き上げを決定しました。アメリカのESTA(21ドル)やイギリスのETA(10ポンド)と同程度の水準に揃えた形です。
ただし、以下に該当する方は無料で申請できます。
- 18歳未満の方
- 70歳以上の方
家族旅行の場合、子供の分は無料で済むのはありがたいポイントです。
支払い方法はクレジットカードまたはデビットカードが予定されています。ESTAと同様に、公式サイト以外の代行サイトが手数料を上乗せしてくるケースが予想されるため、運用が始まったら公式サイトのURL(EU公式の「travel-europe.europa.eu」ドメイン)を確認してから申請してください。
ETIAS対象国: シェンゲン圏30カ国
ETIASが必要になるのは、以下の30カ国への渡航時です。
シェンゲン協定加盟国(27カ国)として、オーストリア、ベルギー、クロアチア、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、リヒテンシュタイン。
加えて、シェンゲン協定に完全加盟はしていないものの、ETIASの対象に含まれる3カ国があります。ブルガリア、ルーマニア、キプロスです。
筆者はこの30カ国のうちドイツ、スイス、フランス、イタリア、スペイン、ノルウェー、オーストリア、チェコ、スロベニア、クロアチア、ポーランド、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、ハンガリー、スロバキア、リトアニア、ラトビア、エストニア、フィンランドの20カ国に渡航経験がありますが、これまではパスポートだけで自由に行き来できていました。今後はETIASの事前申請がプラスされることになります。
とはいえ、手続き自体はオンラインで10〜15分程度で完了し、3年間有効なので、一度取得すればしばらくは再申請の必要がありません。年に何度もヨーロッパに行く方にとっても、そこまで大きな負担にはならないはずです。
イギリスはETIASの対象外(ETAが別にある)
よくある勘違いですが、イギリスはETIASの対象ではありません。イギリスは2020年にEUを離脱しており、シェンゲン圏にも含まれていません。
イギリスには独自の電子渡航認証「ETA(Electronic Travel Authorisation)」があります。2025年4月から日本人を含むビザ免除対象国の渡航者にも適用が開始されました。
- 料金: 10ポンド(約2,000円)
- 有効期間: 2年間
- 申請方法: 「UK ETA」アプリからオンライン申請
ETIASとETAは別のシステムです。ヨーロッパ周遊でフランスとイギリスの両方に行く場合は、ETIASとETAの両方が必要になる可能性があります。旅程に合わせて確認してください。
イギリスのeSIMや通信事情についてはイギリスのeSIMガイドで詳しくまとめています。
ESTAとETIASの比較
アメリカのESTAとヨーロッパのETIASは似た仕組みですが、細かい違いがあります。旅行先によって必要な認証が異なるので、整理しておきます。
対象地域について。ESTAはアメリカ(ハワイ・グアムを含む)、ETIASはシェンゲン圏30カ国です。
料金について。ESTAは21ドル(約3,200円)で全年齢が対象です。ETIASは20ユーロ(約3,300円)で、18歳未満と70歳以上は無料です。
有効期間について。ESTAは2年間、ETIASは3年間です。
滞在可能日数について。ESTAは1回の滞在で最大90日です。ETIASは180日間のうち最大90日です。
申請方法について。どちらもオンラインのみで完結します。
審査時間について。ESTAは通常72時間以内(多くは即時)です。ETIASは通常数分以内、最大96時間(追加審査の場合は最長30日)の見込みです。
どちらも「ビザではなく事前のオンライン認証」という点は共通しています。ESTAの申請経験がある方なら、ETIASも同じ感覚で対応できるでしょう。ESTAの申請手順について詳しく知りたい方は、ESTA申請ガイドを参考にしてください。
申請方法(予定)
ETIASの申請受付はまだ開始されていませんが、EUが公開している情報をもとに、申請の流れを説明します。
申請は公式ウェブサイトまたは専用アプリからオンラインで行う予定です。必要な情報として、有効なパスポートの情報(番号、有効期限、発行国)、氏名・生年月日・国籍などの個人情報、連絡先(メールアドレス、住所)、渡航に関する質問への回答(健康状態、犯罪歴、過去の入国拒否歴など)を入力します。
パスポートをスマホのカメラで読み取って自動入力する機能も搭載される予定で、手入力の手間は最小限に抑えられる見込みです。
審査はほとんどの場合、数分以内に完了する見込みです。申請内容が各国のセキュリティデータベースと照合され、問題がなければ即座に承認されます。ただし追加の確認が必要な場合は最大96時間、さらに精査が必要な場合は最大30日かかる可能性があります。
承認されたETIASの情報はパスポートに電子的に紐づけられるため、印刷して持ち歩く必要はありません。空港のチェックインカウンターや入国審査で、パスポートを提示すれば自動的にETIASの有無が確認されます。
申請受付の開始時期は、運用開始日の数ヶ月前に発表される見込みです。公式情報が出たらこの記事も更新します。
有効期間は3年(パスポートの残存期間に注意)
ETIASの有効期間は承認日から3年間です。ESTAの2年間よりも1年長い設定です。有効期間中はシェンゲン圏への渡航を何度でも繰り返すことができます。
ただし、以下の場合はETIASが無効になります。
- パスポートの有効期限がETIASの有効期限より先に来る場合(パスポートの有効期限に準じる)
- パスポートを更新して番号が変わった場合
- 登録情報に変更が生じた場合(氏名、国籍など)
1回あたりの滞在可能日数は「あらゆる180日間のうち最大90日」です。これはETIASに限らず、シェンゲン圏の既存ルールと同じです。たとえば4月1日に入国した場合、その前後180日間の中で合計90日を超えて滞在することはできません。
ヨーロッパ周遊を計画している方は、シェンゲン圏内の国を移動しても滞在日数は通算されるという点に注意してください。フランスに30日、イタリアに30日、ドイツに30日滞在すると、合計90日に達します。
ETIASが拒否された場合
ETIASの申請が拒否された場合、ビザ免除での渡航はできません。拒否された場合の選択肢は以下のとおりです。
まず、拒否理由が通知されるため、内容を確認します。情報の入力ミスが原因であれば、修正して再申請することで解決できる場合があります。名前のスペルやパスポート番号の誤入力は、ESTAでも最も多いミスです。
正当な理由で拒否された場合は、拒否を行った国のETIAS国内ユニットに対して異議申し立て(アピール)を行うことができます。異議申し立ての手続きや期限は各国の法律に基づきます。
異議申し立てが認められなかった場合は、渡航先の国の大使館でシェンゲンビザ(短期滞在ビザ)を申請するという選択肢が残ります。ビザ申請には面接予約が必要な場合もあり、数週間〜数ヶ月かかることがあるため、余裕を持ったスケジュールで動いてください。
拒否される可能性が高いケースとしては、犯罪歴がある場合、過去にシェンゲン圏で不法滞在した場合、テロ関連のデータベースに登録されている場合などが挙げられます。一般的な旅行者であれば拒否される可能性は低いですが、万が一に備えて出発の2週間以上前に申請しておくことをおすすめします。
ヨーロッパ旅行の準備スケジュール(ETIAS導入後)
ETIASが運用を開始した後のヨーロッパ旅行の準備は、以下のようなスケジュールになります。
出発1ヶ月以上前にやること。パスポートの残存期間を確認します。シェンゲン圏は出国予定日から3ヶ月以上の残存期間が必要です。残存期間が足りなければパスポートの更新を申請してください。
出発2週間以上前にやること。ETIASの申請です。多くは数分で承認されますが、追加審査の可能性を考慮して余裕を持って申請します。
ETIAS承認後にやること。eSIMの購入とインストール、VPNの準備、海外旅行保険の確認を進めます。
出発1週間前にやること。クレジットカードの海外利用設定の確認、オフラインマップのダウンロード、現地通貨の為替レートチェックを行います。
出発前日にやること。eSIMのインストール確認、データローミングOFF設定の確認、モバイルバッテリーの充電を済ませます。
ETIASは渡航準備の初期段階で済ませておくべき手続きです。航空券を予約したタイミングで一緒に申請してしまうのが最も確実です。
EES(出入国管理システム)との関係
ETIASと一緒に語られることが多いのが、EES(Entry/Exit System)です。EESは2025年10月から段階的に運用が始まった出入国管理システムで、シェンゲン圏の空港や国境で指紋と顔写真を登録する仕組みです。
EESはシェンゲン圏に入るすべてのビザ免除旅行者が対象で、初回の入国時に生体情報を登録します。以降の出入国はこの情報をもとに自動的に記録されるため、パスポートのスタンプは不要になります。
ETIASとEESの関係を簡単に言えば、ETIASが「出発前のオンライン事前審査」で、EESが「空港での生体情報登録」です。どちらもセキュリティ強化を目的とした仕組みですが、手続きのタイミングが異なります。EESはすでに段階的に運用されているため、2026年にヨーロッパに渡航する方は、空港で指紋と顔写真の登録を求められる可能性があります。初回は少し時間がかかりますが、2回目以降はスムーズになります。
ヨーロッパ旅行のネット環境はeSIMが最適
ETIASの話題からは少し離れますが、ヨーロッパ旅行で意外と準備を忘れがちなのがネット環境です。地図アプリ、翻訳アプリ、配車アプリ。ヨーロッパの街歩きではスマホが手放せません。
筆者がヨーロッパを旅行する際は毎回eSIMを使っています。理由は単純で、SIMカードの差し替えが不要で、日本にいるうちに準備が完了するからです。空港に着いてからSIMカード売り場を探す必要がありません。
ヨーロッパ向けのeSIMは、ヨーロッパ周遊プランが充実しているのが特徴です。1枚のeSIMでフランス、イタリア、スペインと複数の国をカバーできます。国境を越えるたびにSIMを入れ替える手間がないのは、周遊旅行では大きなメリットです。
ヨーロッパ向けeSIMの料金比較や選び方はヨーロッパのeSIMガイドにまとめています。渡航先が決まっている方は、各国のガイドも参考にしてください。
フリーWiFi利用時はVPNで通信を守る
ヨーロッパのカフェや駅、ホテルにはフリーWiFiが整備されていますが、暗号化されていないネットワークも少なくありません。特にパリやバルセロナなど観光客が多い都市では、フリーWiFiを狙ったサイバー攻撃のリスクが指摘されています。
筆者はヨーロッパ旅行中、ホテルのWiFiを使う際は必ずVPNを起動しています。クレジットカード情報やパスワードを入力する場面が多い旅行中こそ、通信の暗号化は重要です。
VPNは月額数百円で利用でき、スマホに入れておけばワンタップで接続できます。VPNの比較記事でサービスの選び方を解説しているので、出発前にチェックしてみてください。
海外旅行保険付きのクレジットカードを持っておく
ヨーロッパは医療費が高額な地域です。フランスやドイツで救急搬送されれば、数十万円の請求が来ることも珍しくありません。海外旅行保険は必須ですが、年に1〜2回の旅行なら、クレジットカード付帯の海外旅行保険で十分カバーできるケースが多いです。
ETIASに関する注意点まとめ
ここまでの情報を整理します。
ETIASは2026年第4四半期に運用開始予定です。ただし過去に複数回延期されているため、出発前に最新情報を確認してください。
申請料金は20ユーロです。当初予定の7ユーロから引き上げられました。18歳未満と70歳以上は無料です。
対象国はシェンゲン圏の30カ国です。イギリスは対象外で、別途ETA(10ポンド)が必要です。
有効期間は3年間です。パスポートの有効期限が先に来る場合はそちらに準じます。
滞在可能日数は180日間のうち最大90日です。これは既存のシェンゲン圏ルールと同じです。
運用開始後6ヶ月間は移行期間です。この間はETIASなしでも入国が認められます。
申請受付はまだ開始されていません。運用開始日の数ヶ月前に受付が始まる見込みです。
筆者のヨーロッパ渡航経験から
筆者はこれまでヨーロッパ20カ国を訪れてきましたが、パスポートコントロールで困ったことはほとんどありません。シェンゲン圏内の移動は国境審査がないため、電車でドイツからチェコに入っても、バスでスロベニアからクロアチアに移動しても、パスポートの提示すら求められないことが大半でした。
ETIASが導入されても、この「国境を意識しない移動」という体験は変わりません。変わるのは、最初にシェンゲン圏に入るときに、事前のオンライン認証が必要になるという1点だけです。
とはいえ、ESTAの申請を忘れてアメリカで搭乗拒否されるケースが後を絶たないように、ETIASの存在を知らずに空港で足止めを食らう人は出てくるでしょう。この記事を読んでくださった方は、そうした事態を避けられるはずです。
ヨーロッパ旅行の準備は、ETIASだけで終わりではありません。通信環境、セキュリティ対策、クレジットカードの準備も含めて、出発前に一通り済ませておきましょう。ヨーロッパのeSIMガイドで通信環境の準備を、VPN比較でセキュリティ対策をそれぞれチェックしてみてください。
よくある質問
ETIASはいつから始まりますか?
ETIASの申請料金はいくらですか?
ETIASとESTAの違いは何ですか?
ETIASの有効期限はどのくらいですか?
イギリスに行く場合もETIASは必要ですか?
ETIASが導入されたら、今までどおりビザなしでヨーロッパに行けなくなるのですか?
ETIASの申請にはどのくらい時間がかかりますか?
子供もETIASの申請が必要ですか?
海外旅行の準備、これも忘れずに
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